第89回日本結核病学会総会

〜T-SPOT®.TBの臨床応用について〜

座長:門田 淳一 先生 / 演者:猪狩 英俊 先生

ランチョンセミナー記事

【IGRA検査の概要~使用用途~】

IGRA検査は主に活動性結核の診断補助に使われ、接触者検診、医療従事者の採用時健康診断、また、免疫抑制状態にある患者の健康管理という形でも使われています。

【IGRA検査の普及とガイドラインへの反映】

IGRA検査の普及は、2000年の米国胸部学会(ATS;American Thoracic Society)による論文1)がきっかけです。活動性結核感染症のみならず、潜在性結核感染症も積極的に治療するという考え方が示されています。本邦では2005年に日本結核病学会・日本リウマチ学会合同で「さらに積極的な化学予防の実施について」という指針が出され、2006年に日本結核病学会の予防委員会が先発のIGRA検査の指針、さらには2012年に「潜在性結核感染症治療指針」も作られています。この間にT-スポット®.TB(以下、T-スポット)が発売され、両者をまとめて、インターフェロンγ(IFNγ)遊離試験の使用指針を出すことが日本結核病学会代議員会から報告されました。間もなく「IFNγ遊離試験使用指針」という形で提示されると思います。

【IGRA検査の比較】

では、IGRA検査はどう違うのか。
国立病院機構千葉東病院で、疾患対象別に両者の比較を行った結果から言えることは、細胞性免疫が低下すると、陽性率が低下する可能性があるということです。上述の、RA患者でのT-スポット陽性率6%を基準に考えてみます。CKDのStage3では陽性率7%でしたので、この集団では、潜在性結核感染者がいるのではないかといった数値です。ところが、CKDのStage 4/5では、陽性率2%になっています。この結果は、腎機能が悪化すると、免疫応答が低下して、本来陽性になるべき人がみえてこないと解釈するのがリーズナブルです。一方HDでは、陽性率15%でした。HDによる免疫応答低下によって陽性にならないのか、または、HDを行っている患者はそれだけ結核になりやすいのか、どちらとも解釈できる結果です。Txでは陽性率5%です。Txを行うと、免疫抑制剤を2~3剤、しかも長期間使用する場合が多いので、免疫応答低下という点での5%なのかもしれません。しかし、そういう状態であれば、結核感染リスクが高まるため、5%という値は過少評価されている、とも取れます。これらをどのように解釈するかがとても重要なのです。
また、両IGRA検査について言えますが、陽性に影響する因子としてリンパ球数があります。IGRA検査では、リンパ球数が増えると陽性率が高くなります。これは、判定不可にも影響します。リンパ球数が1,000以下になると、判定不可の割合が高くなります。
なお、リンパ球数と判定不可の割合の関係を比較すると、T-スポット検査の方が他のIGRA検査よりも判定不可の割合が低くなることが統計解析の結果から示されています。他のIGRA検査では全血を材料とするので、リンパ球数に応じた結果が出るのに対し、T-スポットではリンパ球を分離して数を調整する過程があるため、感度低下の程度は少ないと考えられます。
大分大学医学部の小宮先生の報告2)では、両者ともリンパ球数の減少とともに感度が低下することと、ELISPOT法の方が影響を受けにくいことが結論付けられています。また、リンパ球数が500/μL以下の結核患者の感度は、ELISPOTでの81%と比較して他のIGRA検査では39%という結果も示されています。リンパ球数が低下するような疾患、あるいは少ない状態の患者にとっては、T-スポットの臨床性能が勝りそうな結果です。

【T-Cell Xtend®の原理】

ここで、結果に与える影響としてもう1つ、T-Cell Xtend®について簡単に説明します。T-スポットは末梢血単核球成分(PBMCs)を密度勾配法で分離し、該当部分を末梢血単核球として取り出しますが、採血後8時間以上経過すると、PBMCsに劣化した好中球成分が混入し、結果に影響します。したがって原則的には採血後8時間以内の処理が必要ですが、試薬に添付されているT-Cell Xtend®により、採血後32時間まで検査が可能になります。T-Cell Xtend®は、好中球と赤血球をクロスリンクする抗体複合体であり、PBMCsは比較的ピュアな状態を保つと言われています。T-Cell Xtend®に関する主な論文3), 4)では、いずれもT-Cell Xtend®を添加することで、採血後8~32時間経過した検体であっても、同等の結果が得られることが示されています。

【T-スポットの国内臨床試験】

日本におけるT-スポットの感度ならびに特異度を評価した臨床試験が行われています。私が検討に関わった特異度について詳しく説明します。結核感染低リスクの健常者として千葉大学の学生を対象に、臨床試験を実施しました。対象111名、平均年齢22.1歳、男性35名、女性76名でした。特記すべきは除外基準です。主な除外基準は、まず「海外居住歴・海外で出生」です。海外とは、例えば東南アジアのような結核高蔓延の地域が該当します。また、「結核罹患率の高い地域の居住歴」です。東京都をはじめ大阪や名古屋などにも結核罹患率の高い地域が存在します。そして、「医療従事者としての病院勤務歴」です。一次的な病院勤務を経て再入学した人も除外しました。つまり、それだけ厳密に結核未感染の症例を集めようと努力したということです。
結果は、T-スポットでは、陽性1名、陰性110名、判定保留0名でした。特異度は99.1%でした。

【IGRA検査の限界】

最後にIGRA検査の考え方について簡単に説明します。IGRA検査は、結核の診断キットではありますが、結核菌特異的抗原に対する免疫応答をみています。IGRA検査の適応は、活動性結核診断の補助、潜在性結核感染症の診断の補助、ということです。したがって、リンパ球数の減少や、HIVのような免疫不全、また、ステロイド剤や免疫抑制剤を使用している場合には、免疫応答が低下しているため、この点を考慮しないと、診断を誤ることになりかねません。繰り返しになりますが、日本におけるIGRA検査は、感度も特異度も非常に高い優れた検査です。判定不可要因として末梢血リンパ球数が関係しますが、リンパ球数が少ない症例でもT-スポットの方が判定不可となりにくいことが証明されました。そして、各疾患に対するT-スポット陽性率の違いにもあったように、結核菌特異的抗原に対する免疫応答をみるという視点がないと、診断を誤る可能性に繋がります。これらを踏まえ、IGRA検査をうまく臨床利用していくということがコツではないかと思います。

<References>
1) Am J Respir Crit Care Med. 2000; 161(4 Pt 2): S221-247.
2) Komiya K. et al. Intern Med. 2010; 49(17): 1849-1855.
3) Wang SH K. et al. Scand J Infect Dis. 2010; 42(11-12): 845-850.
4) Lenders LM. et al. J Infect. 2010; 60(5): 344-350.
5) Diel R. et al. Chest. 2010; 137(4): 952-968.

ランチョンセミナー動画

  • 経歴紹介・IGRA検査の使用目的
    [7分56秒]
  • IGRA検査の比較(疾病別の成果)
    [6分18秒]
  • IGRA検査の比較(結果の解釈)
    [8分18秒]
  • Tspotの国内臨床試験(感度、特異度の評価)
    [6分23秒]
  • Tspotの国内臨床試験(臨床試験のあり方)
    [4分35秒]
  • IGRA検査の考え方(症例提示)・まとめ
    [6分34秒]