IGRA導入後の現状とメリット
ー長崎大学病院ー


はじめに

Hospital
長崎大学病院
長崎大学病院は県内唯一の大学病院であり、長崎市と近隣の市町を二次医療圏とする病床数862床の特定機能病院である。感染症の地域中核病院として、第一種感染症指定医療機関ならびに第二種感染症指定医療機関の指定を受けており、結核感染対策への取り組みを非常に積極的に行っている医療機関である。

2014年7月に「平成25年結核登録者情報調査年報集計結果(概況)」が発表された。これによると、国内の新登録結核患者数は20,495人(対前年比788人、3.7%減)、人口10万人対罹患率(以下、罹患率)は16.1(対前年比0.6減)とともに減少傾向にある。しかし、主要国では、フランス 7.4、オーストラリア 5.7、ドイツ 4.9、アメリカ 3.1と低まん延を実現している状況をみると、その差はいまだ大きい。特に、国内の状況を都道府県別でみると、大阪府 26.4を筆頭に、和歌山県 20.6、東京都 20.1、長崎県 19.9、兵庫県19.8は依然として高い罹患率となっている。
このように、長崎県は罹患率が高い状況に悩まされているが、自治体、医療機関と連携しながら、低まん延に向けて長年結核対策に積極的に取り組んでいる。
今回、長崎大学病院 検査部を訪問し、部長の柳原 克紀教授および副技師長の松田 淳一 氏に、結核診断におけるインターフェロンγ遊離試験(Interferon Gamma Release Assay:IGRA)の意義についてお話をうかがった。

長崎大学病院における結核検査の状況

長崎大学病院は長崎市の中心部にほど近い浦上地区にあり、長崎市と近隣の市町を二次医療圏とする病床数862床の特定機能病院である。感染症の地域中核病院として、第一種感染症指定医療機関(第一種感染症病床 2床)、第二種感染症指定医療機関(結核病床 6床)の指定も受けている。医科部門と歯科部門に分かれ、医科部門の1日平均外来患者数は約1,300人(年間延べ31万人)、1日平均入院患者数は750人に及んでいる。地域医療に根ざして最高水準の医療を提供することをモットーとしているが、医療圏外からの紹介患者も多く、合併症を有する結核患者、疑い例の紹介など広く受入れている。
現在、長崎大学病院における結核菌を含めた抗酸菌検査数は、年間およそ2,200件(2012年 2,223件、2013年 2,205件)である。検査対象者の年齢分布(2013年)は、 19歳未満 1%以下、20-69歳 41.8%、70歳以上 58.2%となっているが、これは国内の新登録結核患者数の比率と同様に高齢者に多い傾向がみられている(平成25年における全国の新登録結核患者の年齢別比率 19歳未満 1.1%、20-69歳 41.4%、70歳以上 57.4%)。抗酸菌検査の実施対象者のうち、結核症が疑われた患者、ならびに排菌結核患者が発生した場合の接触者へのスクリーニング検査としてIGRAが実施されているということであった。

長崎大学病院におけるIGRAの現状

長崎大学病院でのIGRA導入は2011年とそれほど早くはなかったが、過去2年間のIGRAの依頼件数は2012年 718件(検査例の32.3%)、2013年 788件(同 35.7%)にまで増加してきている。柳原氏によれば「IGRA導入によって、結核感染の疑い例や接触者健診はもちろんのこと、喀痰を採取できない高齢患者などにもたらされた診断的有用性は大きい」とのことでIGRAに対する評価は高い。2013年4月からはT-スポット®.TB(以下、T-スポット)を導入している。導入当初は検査キットが変わっても結果に差はないだろうと思っていたが、実際に使用してみると、T-スポットのメリットを実感することとなった。
長崎大学病院におけるT-スポット導入後の実際の検査成績を表に示している。T-スポットを導入した2013年4月から同年12月までの成績である。これをみると、判定保留率は3.4%、判定不可率は3.5%と低い結果が出ている。「判定保留や判定不可があることは検査のしくみ上やむをえないが、これらは検査結果が出ないことと同じなので少ないに越したことはない。その点はT-スポットのメリット、特長と言って良いのではないだろうか」と柳原氏は語っている。なお、結核発症が確定した患者において、T-スポットによる見落とし事例はなかった。

高齢者、小児などでのIGRAの有用性およびT-スポットのメリット

高齢者では一般的な結核検査の材料である喀痰や胃液の採取は難しい。また、気管支鏡による侵襲的な検査はQOLの観点から実施しにくい。同様のことは小児でもいえる。こうした患者で、IGRAのように侵襲性が低い検査法で診断の判断材料が増えることは非常に有用だ」と柳原氏は語っている。
また、T-スポットを使用するメリットに関しては、判定保留、判定不可が少ないことのほかに、採血の簡便さと検査まで最大32時間の猶予がある点が挙げられている。松田氏は長崎医療圏で行われるIGRAの講習会の講師も務めているが、受講者からは「採血管1本ですむ点が良い」「採血量は6mL以上あれば良いので、検体採取の手間が軽減される」「検査までに最大32時間の猶予がある(T-Cell Xtend®試薬を使用した場合)ため、検体提出までの時間に余裕が生まれ、採血する看護師や検査依頼をする医師の負担が軽減される」といった声がたびたび聴かれるということであった。

おわりに

近年、結核罹患率の地域差や外国人結核患者数の増加傾向が問題となっている。そのような中、長崎県は罹患率の高い都道府県の第4位であり、また、国際観光都市であることから外国人観光客、在留外国人も増えているという現状がある。このような状況を踏まえ、長崎大学病院をはじめとした第二種感染症指定医療機関ならびに保健行政の努力により、1日も早く低まん延を実現すべく、積極的な取り組みが行われている。