IGRA検査の早期積極導入事例
ー大阪医科大学附属病院ー


職員の結核検診は多くの医療施設で
未だ十分とはいえない

Hospital
大阪医科大学附属病院
901床を有する特定機能病院で、1日に約2千人の外来患者が訪れる高槻市の中心的医療施設である。
結核感染対策に関する取り組みは非常に積極的で、IGRA承認後いち早く職員健診へ導入し、現在はTスポットによる管理を実施している。

わが国の結核罹患率は2000年以降漸減しているが、2012年の新規登録患者は21,283人、人口10万人当たりの結核罹患率は16.7となっており、1970年代のアメリカと同等レベルである。このような中蔓延国からの脱出をはかるべく、2011年5月に「結核に関する特定感染症予防指針」が改正され、2015年までに結核罹患率を10万人対15以下とする目標が示された。指針では蔓延防止策の一つとして、健診の際にはインターフェロンγ遊離試験(IGRA)や分子疫学的調査を積極的に活用することが重要であるとされている。患者検査ではすでにIGRAの使用頻度は高まっているが、職員健診では未だ胸部X線撮影のみの施設が多く、ツベルクリン反応検査(ツ反)を採用している施設すら少ない状況といわれている。一方、結核の施設内アウトブレイクを防ぐととともに職員の安全確保の点から、IGRA検査を取り入れることの重要性も注目されている。このような中、大阪医科大学附属病院ではIGRAの保険適用直後から職員健診に導入し、結核感染対策を強化してきた。

大阪医科大学附属病院の職員における結核検診体制

同院は901床の特定機能病院として29の診療科と14の中央診療部門を配し、1日平均外来患者数 約2,000人、1日平均入院患者数800人にのぼる施設である。職員らの健診は、同院感染対策室と大阪医科大学保健管理室がタッグを組んで行っている。同院職員と学生の入職(入学)時ならびに年度ごとの健診を行っているが、その総数は年間約500人にも及ぶ。職員の健康管理医を務めるのは医療安全対策室室長であり結核院内感染対策小委員会委員長でもある呼吸器内科医の村尾 仁氏(同院中央検査部 講師)。結核感染診断の結果説明などを含め、職員の健診所見に関する面談はすべて村尾氏が担っている。
村尾氏が感染対策室の任に就いたのは2006年。その当時、IGRAは保険収載されたばかりでIGRAを採用している医療施設はまだ少数であった。当然のように同院の職員健診ではツ反が採用されていたのだが、村尾氏は着任すると直ちにIGRA導入に向けて奔走し始めた。
「その頃、私だけでなく多くのICDも感じていたことですが、ツ反は非常に精度が低く、古典的で信頼性が低い検査法です。そのためツ反では、予防内服の必要性や胸部X線フォローアップの必要性を明確な根拠を持って説明することはできません。結核感染のリスクが高いという根拠を示せるのであれば、受診者はそういった処置に納得もいくでしょうが、ツ反ではそのような説明は叶いません。さらに何百人という職員を対象とした検査には多大な労力もかかります。当時、IGRAは保険収載されたばかりでしたが、ツ反に比べ信頼性が高いという情報は治験成績などから得ていましたので、たとえ費用がかかったとしても、すぐにでもIGRAを導入する必要があると決意したのです」。IGRA導入にあたっては当然ながら、検査方法の変更や検査費用の増加、その他様々な問題が持ち上がったが、村尾氏は病院幹部を含む全職員に熱意を持って説明したことで導入にこぎ着け、現在に至っている。

職員健診へのIGRA導入は重要

「結核院内(施設内)感染対策の手引き:平成26年版(以下、手引き)」には職員の健康管理として、IGRAによるベースラインの取得が推奨されている。さらに結核感染リスクの高い環境(結核病棟など)の勤務者ではIGRAによる定期健診が求められている。全国の医療施設における正確なIGRA実施状況は定かではないが、そもそも定期的な結核検査が実施されている施設は多くないといわれており、IGRAを実施している施設はまだまだ少ないようである。このような現状となっている最も大きな理由は、検査にかかる費用であろうと推測されるが、「手引き」に記載されている対象者には少なくともIGRAを実施することが重要である。冒頭に述べているように、十分な感染対策による職員の安全確保は医療施設の課題となっているが、村尾氏にみるような情熱を持って、課題解決に向かうことが望まれる。

T-スポット®.TBの使用によるメリット(大阪医科大学附属病院の事例)

2013年より、予てから注目していたT-スポット®.TB(以下、T-スポット)を職員健診に導入した。村尾氏らはT-スポットを使用して次のようなメリットを得たと語っている。

  • 結果が「判定保留」となると診断に時間がかかる。T-スポットの導入以降、「判定保留」の割合が2.1%程度になった(表1)ため、診断効率が向上した。
  • 現時点ではデータ集計をしておらず感覚的ではあるが、感度は上がったようである。実際の成績については今後検討したい。
  • 採血が簡単で、それにかかる時間が概ね半分程度と、短縮した。全職員に対する検査の実施を考えると、看護師の負担を大幅に減らすことができた。
  • 病棟看護師に検体採取依頼をする際に、従来の方法では操作説明に非常に時間がかかり、採取ミスもあったが、T-スポットはすぐに操作を理解してもらえ業務効率化につながった。

おわりに

つい最近も大阪府内では結核集団感染事例が発生したばかりである(大阪府報道発表資料2014年5月16日)。このように国内では集団感染が散発し、免疫抑制剤投与患者など一般病棟の入院患者からの結核患者発生も少なくないと言われている。同院のようにIGRAを用いた積極的な施設内結核感染対策が、全国で広く行われ結核の蔓延防止につながることが望まれる。